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羅生門の続き

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 その後下人(げにん)盗人(ぬすびと)となり日本を越え、世界に名を残した。
 それはさておき、老婆は黒洞々(こくとうとう)たる夜を見ていた。だがそれもつまらなくなり、とりあえず羅生門(らしょうもん)の楼の上へと戻った。老婆は疲れてそのまま寝てしまった。
   ―数日後―
 老婆はぱっちりと目を開けた。そして
「私は死ぬんじゃなかろうか!…大丈夫だろうか。」
と独り言を発した。すると 「あんたは、大丈夫や!」 という声が…そこに現れたのはなんとあの下人。老婆が話を聞いてみた。
「盗んだ物を売って得た(かね)を落としてしまってさあ大変だ。」
と答える。その後も羅生門の上で二人の話は続いた。話が始まって14分ほど経過したころ老婆はいきなりこうい()
「死んだら、埋めてください。」
その衝撃的な言葉に下人は…
「うん。分かってるよ。でも早く寝なさい。」
話の意味がよくわからないまま、いつの間にか夜になっていた。
「はい。じゃ、よろしく!」
セーラー服(無造作に捨ててある死骸が着けていた服)に鞄を下げた老婆は元気よくそう答え寝てしまった。
 翌朝、老婆が目を覚ますと下人の姿はどこにもない。なんと下人は自動販売機に忘れていったお釣りがないかを丁寧に調べていた。それを知らない老婆は下人を心配した。それもそのはず、まもなくお昼の1時なのに気づいてからもう2時間は経っている。
 そのころ下人は26台目の自販機を調べていた。なんとその自販機には2銭も入ってい
る!慌てて下人はその金を拾った。下人はそのお金を使って瑞典(スウェーデン)へと逃亡した。老婆は下人が帰ってくるのを待っていた…
 次の日、その次の日、そのまた次の日、何日待っても下人は帰ってこない。老婆はショックのあまり風邪をひいた。医学が進歩いていないのか医師にはどうすることもできなかった。そのため老婆は息を引き取った。
 数年後、再度盗人になった下人のもとへ1通のメールが来た。
「老婆さんがお亡くなりになりました。」
このメールを見た下人はハッとした。羅生門の楼の上に単二乾電池を3本忘れてきたことに…
そのショックで下人は目の前が真っ白になった。しばらく経って意識が戻り目を覚ますと辺りは異様に古臭くなっている。持っていた9銭はなくなっていた。
 下人は羅生門の下で未来の世界にタイムスリップしていたのだ。結局、下人は約束通りに老婆を埋めてあげることができませんでした。
(平成十八年一月)




※見る人によっては青空文庫に登録されている作品のように感じるかもしれませんが、
この作品は青空文庫とはまったく関係ありません。